303号室から愛をこめて

何が楽しくて生きているのか

アンガーマネジメント


憤怒、嫉妬、憎悪、怨恨、悲哀、苦悩、焦燥、
他にも何かあるだろうけどまあいいや。


人間の負の感情は劇薬。
扱い方次第では自らを救うし、殺す。

怒りの炎に身を焼き焦がされた憐れな亡骸は数しれず。
巷は火葬いらずの死屍累々。

怒りで自らを正当化することもある。
否定することで獲られる肯定もある。

至極自然なこと。
人間に組み込まれているシステムなのだから。



幼い頃は疑いようのない全能感に満ち溢れていた。

何でもできる気がして、
何にでもなれる気がしていた。

背が伸びるにつれてそれが幻想だと気付き始める。



身体だけは立派な大人になり、
金も悪知恵も増え、できることも増えたはずなのに
できないことも増えていることに気付く。

自分だけは特別でありたいと願うのに、
その他大勢を構成する部品に過ぎないと知る。

そんな自分に劣等感を覚え、優れた者に嫉妬し、
悩み、苦しみ、悲しみ、焦り、憎しみ、
どんなプロセスを経ても行き着く先は、怒り。

少なくとも僕はそうだった。



怒りはセックスよりも気持ち良くて、
ドラッグよりも依存性があるのかもしれない。

なかなか抜け出せない、やめられない。

他人を傷付け、自らをも傷付け、
あとに残るのは後悔と虚しさとわだかまり

反省も繰り返すが、過ちも繰り返す。

怒りによって守られてきたものがある。
くだらない自尊心と虚構の正当性がそれだ。

そして灰になった。



最近、おだやかと言われることが増えた。
元々どちらかといえば大人しいほうなのだが。

とはいえ、
今も内心おだやかでないときのほうが多い。
沸々と血が煮えたぎるのを感じることはある。

その熱量を原動力に変換できる術を今更知った。
この時点で君は僕よりよっぽど優れているよ。



文章が書けるやつ、歌が上手いやつ、
面白いやつ、賢いやつ、顔のいいやつ、
センスのあるやつ、人気のあるやつ……

クソほど悔しくてムカつくけれど、
彼らのしてきた努力を僕はしてきたのかい?
彼らに追いつく努力を僕はしているのかい?

絶対に負けない、絶対に追い抜かしてやる、
絶対にその鼻へし折ってやるから待ってろ。

それがようやくできるようになったんだ。



怒り、負の感情は、原動力になる。
それもとてつもなく強いものに。

飄々とした顔で殺してくる、
反対に生かしてくれもする。


怒りは、用法用量を守り正しくお使いください。