303号室から愛をこめて

何が楽しくて生きているのか

うまぴょい伝説

モーニング娘。の『LOVEマシーン』と『恋愛レボリューション21』、はっぱ隊の『YATTA!』を、平成の“ええじゃないか”だと論じる人物がいる。私は腰痛博士と呼ぶが、彼の視点や考察はたしかに鋭く、三曲とも沈み行く世を憂いつつ底抜けに明るくキャッチーな振り付けで踊る。当然、私もこの論を支持しているわけだ。

昨今、電波ソングなど珍しくない。が、ここで『うまぴょい伝説』である。世界情勢がどれだけ深刻でも、どんなに辛い境遇にあっても、ひと目なんて気にせず「うまぴょい♪うまぴょい♪」してれば万事解決だろう。ひと度「うまぴょい♪」したらたちまちみんな「うまだっち」である。

『うまぴょい伝説』の作詞者はこの曲の歌詞を、ワインを飲んで裸で書いたと聞いた。とんでもない逸話である。であるならば我々もワインを飲んだうえで全裸で「うまぴょい♪」するべきなのではなかろうか。酒で嫌なことなど忘れ、生まれたての姿で、頭からっぽのまま「うまぴょい♪うまぴょい♪」踊る……これ以上の現実逃避などあるだろうか。
これこそ、この『うまぴょい伝説』こそ、令和の、いや二十一世紀の“ええじゃないか”なのではなかろうか。

余談であるが、どうにもならない事態を目の前にし、現実を直視できないでいる私は、ウマ娘によって首の皮一枚繋がっている状態である。冷蔵庫の中に何もないことに気付き家を出たが、脳内では絶えず「うまぴょい♪」している。一種のドラッグだ。「うまぴょい♪」していれば元気になった気がする。『うまぴょい伝説』は精神を安定させる。

気付けば左手はワインを握っていた。我に返り棚にそっと戻した。