303号室から愛をこめて

何が楽しくて生きているのか

夜明け前

言葉はナマモノ。

だから書きかけで時間が経ったものは出さないことが多くて。でもこれは読み直しても書いた当時の自分と今の自分のズレが珍しくないから加筆して出すことにした。

やあ、先々週くらいの自分。



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まったく性懲りもないよな。


昨晩、終電を逃した。

異国の地に置いてけぼりにされたようなそんな孤独感。
実際のところ最近住み始めたボロ屋から1時間近く離れた駅だ、異国と言って差し支えなさそうな気もする。
そりゃあ当然ホームを間違えて終電を逃しもするさ、仕方ない、仕方がなかったのだ。

そういうわけで異邦人の私、独りは慣れっことはいえども正直さすがに心細くもあった。




帰宅してから遅すぎる夕飯にしようとしていたし、行く宛もなく彷徨うのも労力の無駄と感じたので、
生まれたばかりのカルガモの子よろしく、真っ先に目に付いた熱烈中華食堂を謳う有名中華チェーンに入った。
これまでは着席と同時にビールと餃子と炒飯を注文していたがそんな気にもなれず、炒飯と申し訳程度の冷やしトマトを頼んだ。

暖房の効いた店内にいながらスラックスの裾から冷気が込み上げてくるこの感覚はなんだか懐かしく感じた。



学生時代、冬のオール明けによくここを訪れていた記憶がある。
始発に乗って家に帰り床に着くまで酩酊していられるほどにラストオーダー直前まで飲み続けていたがそれでも冬は寒くて、誘惑に負けた男共だけでむさ苦しくお世話になっていたのだ。当時も暖かい店内に入り込む冷気をまとったすきま風が足首から伝わり私を身震いさせた。

否が応でもこれから朝まで時間を潰さなくてはならないというのに、オール明けの記憶を思い出すのも皮肉なもんだなぁという感はあった。



炒飯とトマトを美味しくいただいたあとのことは考えていなかったが、選択肢なんてホテルかカラオケか漫画喫茶か風俗しかない。
結論、オール明け日高屋さんにお世話になっていた学生時代に倣い、鉄板だったカラオケに決めた。悩むまでもなかった、即決である。

フリータイム、そして当然のようにアルコール飲み放題を付けて304号室に通された。
惜しいなぁと思ったのは、縁のある303号室に入れなかったことだけではない。隣の部屋がわかりやすい大学生のグループだったことも理由だ。

カラオケ定番曲の音漏れの波がこちらに押し寄せる。
自分も曲を入れてしまえばまったく気にならないが、曲間で聞こえてくる レゲエ<砂浜