303号室から愛をこめて

何が楽しくて生きているのか

2020-01-01から1年間の記事一覧

夜明け前

死んだように黙り続ける幹線道路沿いを歩いた。 日中の喧騒が嘘のように静寂が包み込んでいる。足元から聞こえる自分の革靴が立てる疲れきった音だけが、声を上げることを許されている。せめて凍えそうなほど寒い風を一身に受け止めた街路樹が鳥肌を立てなが…

「死にたい」がない

炊飯器が鳴るのを待っている。「食べたい」と思った瞬間が一番「食べたい」わけであり、「食べたい」と思ってから料理を始めたらいざ食べ始めるときには飢餓状態でない限りは「食べたい」という気持ちのピークを過ぎてしまっている。 とはいえ「食べたい」と…

なにくそ

毎日何かしらに悔しいと感じており、そのたびに奥歯を強く噛み締めてしまうから、そろそろ草食動物スタイルの歯になってしまうのではないかと気が気でない。 仮に草食動物っぽい歯になったら野菜しか食べなくなるのだろうか。いや、ない。 面接の疲れからか…

刃毀れ

研ぎ澄ましてきた言葉の刃は呆気なく壊れた。 刺すことはおろか突き立てることすら敵わぬ。言葉を失う、とは恐ろしいものだね。 急に頭から思考や意思が消えていくんだ。 言葉で理解してるから言葉が消えたら そりゃあ当然何もなくなってしまうよね。記憶が…

中指

正当に評価されるなんてことは童話の世界のおはなしで、まるでサンタクロースを信じなくなるように大人になるにつれて現実を知る。 だけど乙女がいつか白馬の王子様が迎えに来てくれるのではないかと淡い期待を捨てきれないでいるように、どこか夢見がちな僕…

「ほら息が白い」 煙草の煙を吐いて言ってみせた。「そんな子供だましに引っかかるわけないでしょ」 子供のまんまだねと言わんばかりの呆れ顔で君はため息をついた。 「あ、白い」 「言ったじゃん」 白い煙が夜に溶け込んで消えた。「そういえばこの前言って…

夜明け前

言葉はナマモノ。だから書きかけで時間が経ったものは出さないことが多くて。でもこれは読み直しても書いた当時の自分と今の自分のズレが珍しくないから加筆して出すことにした。やあ、先々週くらいの自分。 ーーー まったく性懲りもないよな。 昨晩、終電を…

目が覚めてそれが夢だとわかった瞬間の感情

なんかおかしい、 そう思うこともなく疑いもしない。 夢の中ではそれが現実、現実が夢を夢だと言うだけ。 懐かしい女性が楽しそうに私に向けて笑顔を見せていた。 なんとも抜き差しならない男と女の関係になってしまい、大学卒業以来ロクに連絡も取ってない…

アンガーマネジメント

憤怒、嫉妬、憎悪、怨恨、悲哀、苦悩、焦燥、 他にも何かあるだろうけどまあいいや。 人間の負の感情は劇薬。 扱い方次第では自らを救うし、殺す。怒りの炎に身を焼き焦がされた憐れな亡骸は数しれず。 巷は火葬いらずの死屍累々。怒りで自らを正当化するこ…

器用貧乏

生まれたときはみんな優秀だった。 生を受ける約10ヶ月ほど前、数億個が競うサバイバルレースで見事1位になったのだから。 落ちぶれたのはいつからだろう。 私はかつて“神童”と呼ばれていた。 生まれて間もなく7歩あるいて立ち止まり、 天地を指し「天上天下…

愛のカタチ

痛いことが何より苦手だった。 痛くするのも、痛くされるのも。痛くされるのは、痛いからイヤ。 痛くするのは、痛いのを知ってるからイヤ。だけどもう余裕綽々で首を絞める。 首を絞めてと頼まれた。できることは全部応えてあげたいと思った。 こんな感情は…

わからない

セブンスターが560円になっていた。 このあいだまでは500円だった気がする。 その前は460円だったような。 もっと前はもっと安かったし…このままいったら1箱いくらまでいくのか。 叙々苑くらいになったらやめようかな。 普通にトラジのほうが美味しいのだけ…

リーマス

案の定、電池が切れた。 数日前から明らかにこうなる兆候があった。メモリを増設したのかというくらい、 そのくらいサクサク脳が動いていた。アイディアは無限に飛び出て、やる気も出る。毎度のことだからわかってはいたけれど、 これは急転直下のフラグであ…

元ネタ解説

暦の上ではディッセンバー でもハートはサバイバーなわけである→暦の上ではディセンバー/ベイビーレイズ 2013年9月11日発売。宮藤官九郎が作詞。NHK連続テレビ小説『あまちゃん』の劇中に登場する、架空のアイドルグループ「アメ横女学園芸能コース」の楽曲…

IQ3を科学する

本日11月7日、なにやら立冬らしい。暦の上ではディッセンバー でもハートはサバイバーなわけである。すみれはセプテンバーだし メルティーラブは離さない。いわゆるSHAZNA状態。 「11月はノーベンバーやろ」などと言われても だからなんなんだと圧をかけて押…

選択

ひとつ想像してほしい。若い男女が砂浜を手を繋ぎ並んで歩いている。 季節は晴天の初夏、波も高くサーファーで賑わっている。 そんなとき、突然の強風で女性の帽子がさらわれた…このとき吹いた風を、あなたなら何と表現する? 私は『海風』と書くか、『潮風…

いいデートしてる?

忘れもしない16年前の11月3日、 ぼくは初めてデートというものをした。 デートとは『親しい男女が日時を決めて会うこと』らしく、否定的ではあったがおうちデートもこの定義的には間違いなくデートであることを認めなくてはならない。 認めたくはないが。「…

深夜徘徊

ドアを大きく開き、潜り込むように乗り込む。 相変わらず乗り降りしづらい車である。 車のカッコよさとは不便さと反比例するものだ。クラッチペダルを踏み切りスイッチを押す。 大袈裟なくらいだが心地よいエンジンサウンドが響く。 せっかくだ、たまには幌…

ハードル

嬉しいことに私の文章を褒めてくださる人がいる。 それは私にとってこの上ない喜びである。 また同時に大きな重圧になるときもある。人間、めんどくせえよな。 学生時代、後輩の意識高い男が講義後にビラを配っていた。 ビラには『自己幸福破壊衝動について…

シェルター

実家に戻り2ヶ月ちょっと、今度は横浜に越してきた。 諸々を清算するための仮暮らしである。 見込みが出来たらすぐにでも飛び出してやるつもりでいる。 この数ヶ月で「足るを知る」ことを知った。 これまではあれもこれも欲張って生きていたように思う。金や…

ゼロサム

良いことと悪いこと、トータルで半分になるってやつ。 あれが本当なら僕の残りの人生は圧倒的勝利なのですが、 きっとそういうことではないのだろうね。 何年も昔のこと。 志磨遼平がドレスコーズの唯一のメンバーになり、 1人体制のドレスコーズで「1」とい…

あるある

年末の紅白に香水の人が出るとかでないとか。 すべてドルガバのせいだ。 某レイザーラモンRG先生いわく、 この世で売れているものはすべて あるある らしい。 たしかにミスチルさんを思い浮かべれば納得である。 曲が刺さらなかった童貞の私からしたら紅白出…

普通

周囲から浮くことは避けたがるのに、 その他大勢と同じように扱われるのは嫌。 誰だって自分は特別であると信じていたいのに、 普通な暮らしさえ送れればそれで良い。 普通、平凡、平均、一般的、人並み… たった一人の普通ではない特別な存在でありたくて、 …

バタフライエフェクト

『エロマンガ先生』を観た日の朝、まさか私が今日『エロマンガ先生』を一気に観るとは思っていなかった。 某オードリー春日さんいわく、これが人生らしい。「朝起きたとき、今日まさか春日に会えるだなんて考えもしなかっただろう。でもそれが現実に起きてし…

エロマンガ先生

天邪鬼というか斜に構えてるというか逆張りというか、 どうしても流行に乗ることができない。 パズドラもそう、『君の名は。』も『鬼滅の刃』もそうだ。 世間の熱が少しばかり冷めるのを待ってから、 ひとり遅れて素晴らしさを知り、ひっそり静かにハマる。 …

ただいま

本日、5ヶ月ぶりに千葉に帰る日。 7月20日が海の日だったのも今では遠い昔の話。 根付いたイメージはそう簡単に崩れることはなく、 今もなお7月20日は長い梅雨が明けて、 気持ちいい快晴の圧倒的な夏日になると信じていた。 とはいえ長距離の運転での視界不…

希望的観測

「あんなにも楽しく一緒に牡蠣を食べたのに」 手元に多量のカルモチンがあれば躊躇なく飛んでるだろう。 先日、メンズエステに初めて行った 普通に生きてるかぎりでは到底知り合うことすらできない、 それはそれは綺麗な女性にキワドイ施術してもらう極上の…

放蕩息子、故郷へ帰る

仕事を辞め、結婚を考えていた交際相手と破局したあとの話 ここに長居する意味はもうないから実家に帰る頭ではいたものの、 のこのこ帰れるような図太さは持ち合わせてはなかった 「早く言わなきゃ」 頭ではわかっていても話すに話せないでいるままここまで…

3ヶ月

故郷を飛び出してちょうど3ヶ月の記念日、 とうとう白旗を振った もちろんれっきとした理由はあるが、 それをあえて書き連ねてだらだら言い訳する気も起きない 堪え性のない怠惰な28歳 ただそれだけでいい その日は良くも悪くも転機だと自分に言い聞かせよう…

珈琲

渋い喫茶店でコーヒーをブラックで注文するようになったら、ブログを再開する そう決意をしてから数年の月日が経った 当時の私にとって結果的に数年もかかってしまった目下の懸案事項であれ、 克服のきっかけはほんの些細なこと 数か月前、職場に設置された…